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閉塞性動脈硬化症

 心臓から送り出された血液(栄養や酸素)を全身の臓器、組織に供給しているのが動脈です。動脈が硬く変化し動脈硬化が生じ、狭くなったり、詰まったりすると、いろいろな臓器に影響を及ぼします。足の動脈で生じ、十分な血液が流れなくなり発症する病気を閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患)といいます。放っておくと足が冷たい、痛いなどの症状が現れます。さらに進行すると腐ってきて、最悪切断になる事もあります。
 閉塞性動脈硬化症の人の約40-60%は心臓や脳の動脈にも病気を持っており、また重症下肢虚血の場合の予後は悪く、1年間で約20%、5年間で約50%の死亡率ともいわれ、早期診断が非常に大切になります。

原 因

 主な原因は、糖尿病、喫煙、高血圧、脂質異常症などです。そのほか危険因子としては高齢、男性、腎不全などがあげられます。

症 状

 初期の症状はしびれ、冷感がほとんどですが、進行すると歩行時に足の筋肉(特にふくらはぎ)に痛みを感じ、歩くことが困難になります。しばらく休むとまた歩けるようになります。これを間欠性跛行といい、この疾患の典型的な症状です。重症度によって4段階に分かれます(フォンテイン分類)。

Ⅰ度:足がしびれる、冷たい、(無症状)
Ⅱ度:間欠性跛行
Ⅲ度:じっとしていても足が痛む
Ⅳ度:潰瘍、壊死

一般的にⅡ度以上で手術が考慮されます。

診 断

 問診の後に視診、触診による検査を行います。足の体温や脈の触れ方などを確認します。次にABI測定という足の血圧と腕の血圧を測り比較する検査を行い、閉塞性動脈硬化症が疑わしい場合には、さらに造影3DCT検査や血管造影検査などの精密検査を行い確定診断します。

治 療

まずバランスの取れた食事や適度な運動を心がけ禁煙に努めることで、動脈硬化の危険因子をコントロールし、下肢症状の改善を目的に、抗血小板薬や血管拡張薬などを使った薬物治療を行います。動脈硬化が進行している場合は、バイパスを作る手術や狭窄・閉塞した血管をバルーン(風船)やステントを使って拡張させるカテーテル治療が必要となります。フォンテインⅢ~Ⅳ度は、放っておくと足を切断することになりかねませんので、切断を免れるためには手術が必須です。

手術方法

 血管内治療外科治療に分けられます。
 血管内治療とは、経皮的に動脈内へカテーテルを通して狭窄・閉塞した血管を拡張・再開通させてあげる方法です。現在では比較的太い血管に対して第一選択の方法です。
 外科治療は閉塞部位を迂回して血管を移植するバイパス術や血管置換術、血栓内膜摘除術などがあります。通常バイパス手術には人工血管を使用しますが、膝下の細い血管に対しては足の内側を走る大伏在静脈という静脈を代用血管として動脈に移植する方法が用いられます。特殊な器具(静脈弁カッター)を用いることで、足の静脈をそのままの形で代用血管として使用でき、手術の創も少なくすみます。
 近年血管内治療が発展し、より低侵襲な治療が可能となり、90歳以上の超高齢者の方にも大きな負担もなく手術を受けていただけます。当施設でも早くから積極的に導入し血管内治療を行っております。病変によっては可能な限り手首の血管から穿刺し、それにより手術後すぐに歩行できるようになります。複雑な病変に対しては血管内治療と外科治療を組み合わせて行うハイブリッド治療も積極的に取り入れ、それぞれの患者さんにあった治療を行っております。
 手術後は多くの場合、劇的に症状が改善します。間欠性跛行は治り、健康な時と同様に色々な運動ができるようになり、また足にできた潰瘍もきれいに治ります。

当院での手術症例

症例1

 92歳男性。肺気腫、呼吸不全で入院中、右第2・4・5趾に潰瘍出現。腎機能障害があるため非造影MRAを施行し、右:浅大腿動脈閉塞、膝下動脈閉塞を認めた。局所麻酔下に右鼠径部からカテーテルを挿入し血管内治療を施行した。
(造影剤使用量30ml)

右浅大腿動脈に対してはステント留置(
右膝下動脈に対してはバルーン(風船)で拡張(

症例2

 74歳男性。慢性腎不全で維持透析施行。閉塞性動脈硬化症(左浅大腿動脈狭窄、左膝下動脈閉塞)があり、以前左浅大腿動脈狭窄に対してステント留置術を施行。薬物治療を行っていたが左第5趾の感染、潰瘍を発症したため、左膝下動脈閉塞に対して大伏在静脈()を使用し、大腿動脈-膝下動脈(後脛骨動脈)バイパス術を施行した。

症例3

 83歳女性。糖尿病、高血圧、閉塞性動脈硬化症(左大腿動脈-膝窩動脈バイパス術後)で定期外来通院中、安静時右下肢痛出現。下肢動脈3DCTで右総大腿動脈及び浅大腿動脈の高度狭窄を認めた。動脈硬化は非常に強く、病変部位から血管内治療だけでは治療困難と判断し、血管内治療と外科治療を組み合わせて行うハイブリッド治療を行った。

症例4

 76歳男性。他院にて重度肺気腫、閉塞性動脈硬化症(右外腸骨動脈及び左腸骨動脈ステント留置後、右大腿動脈-膝窩動脈バイパス術後)で定期外来通院中、右下肢の安静時疼痛が出現したため当院受診。右下肢ABIは測定不能、下肢動脈3DCT及び下肢動脈造影検査で、右総腸骨動脈から膝窩動脈(大腿動脈-膝窩動脈人工血管バイパスグラフト含む)にかけて、非常に長い閉塞病変を認めた。重度の肺気腫があるため全身麻酔下での外科的治療(バイパス手術)は困難と判断し、局所麻酔下で血管内治療と外科治療(血栓除去術)を組み合わせて行うハイブリッド治療を行った。

症例5

 79歳男性。当院にて慢性腎不全(透析管理)、狭心症(冠動脈形成術後、低心機能)、糖尿病で通院中、起床時右足の感覚がなく、起立不可能となったため救急搬送。右下肢ABIは測定不能。下肢動脈3DCTで、右総大腿動脈以下末梢の閉塞を認めたため、緊急に血管内治療を施行し血流再開できたが翌日再閉塞した。低心機能(EF 21%)であったため、局所麻酔下での外科的治療(血栓除去術+バイパス手術)を行った。

症例6

 症例は83歳男性。閉塞性動脈硬化症、肺機能低下(拘束性障害)、心房細動、脳梗塞、貧血で当院内科定期外来通院していたが、施設入所中、右下腿に潰瘍・浮腫が出現したため当科受診。右下腿は足部を中心に多発する潰瘍を認め、発赤・腫脹、感染を伴っていた。下肢動脈造影CTで右浅大腿動脈起始部から膝下膝窩動脈にかけて長い閉塞病変を認めた。既往に肺機能低下(%VC39%)があり、低血圧(最低収縮期血圧60mmHg台)、低体重(38kg、-10kg/年)、ADL低下(車いす生活)、抗血小板薬内服、両側大伏在静脈閉塞を認めたため、全身麻酔あるいは腰椎麻酔下での下腿動脈バイパス術は困難と判断し、より低侵襲に治療を行うため、局所麻酔下ハイブリッド治療(大腿-膝窩動脈人工血管バイパス術+血管内治療)を行った。

治療後の経過

治療後は、治療前と同様にバランスの取れた食事、適度な運動、禁煙が大切です。
 運動療法が歩行能力をより改善し、また1日3.2㎞以上の歩行で死亡率は半減したとの報告もあり、毎日のウォーキングが勧められます。
 薬物治療は必須であり、定期外来通院をしていただき、内服治療、術後のフォローを行います。

健康第一、毎日歩き、楽しく生活していきましょう!