乳房に異常を感じたときに受診する科について


現在、日本では乳癌を主に担当しているのは外科です。ただ、外科の中でも乳房はやや特殊であり、乳房外科の専門医のいる所を受診されるのがベストです。そのほか、産婦人科でも診断は行っている施設もあります。乳房の疾患の診断には専門の知識と乳房のX-線撮影や超音波など専門の設備が必要ですので、それらの整った病院を受診されるようお勧めします。乳癌学会のホームページでは認定医、専門医の氏名を公表しています。


乳房痛について


乳房の痛み自体はよくある症状で、乳腺症のほか、正常の乳房でも月経に伴い痛くなることもあります。そのほか、乳腺炎、筋肉痛などのこともあります。ただ、乳癌の場合にはほとんどがしこりを伴っており、痛みだけのことはほとんどありません。痛みだけの場合には、乳癌よりもまず、乳腺症を疑うべきでしょう。しこりがある場合には痛みのあるなしにかかわらずお医者さんを受診して下さい。わきの下も痛みの多く起こる場所ですが、炎症性にリンパ節が大きくなっている場合などが一番多く、癌のことはまず、ありません。ただ、この場合でもしこりがある場合にはお医者さんを受診されるほうがよいでしょう。


乳腺症と乳癌の関係


乳腺症と一口に言っても、種々の乳腺の変化が複合したものなのです。その中には、乳腺細胞が増えてくるもの、分泌物が出てくるもの、お水がたまってくるものなど様々です。以前、乳腺症は前がん状態などと言われたこともありますが、いまでは大部分の乳腺症と乳癌とは無関係と考えられています。実際に乳腺症のしこりを手術で摘出して、細胞の顔つきが少しおかしいなどと具体的に指摘された乳腺症以外は、余り気にしなくてよいと思います。


乳癌術後のむくみ(浮腫)について


乳癌の手術後のむくみ(浮腫)は、リンパの流れが阻害されている機械的なものが原因です。したがって、特効薬はありません。対症的な方法としては、無理をして腕を使用しない、寝るときは腕の下に枕をして、なるべく高くして寝るなどの注意をします。むくみがひどいときには昼間は強いストッキングのようなもの(エラスティックスリーブといいます)を手の先から腕の付け根までしておくことと、腕の先から根元にかけてのマッサージ、むくみを軽くする薬の服用などの方法があります。また、肥満気味の人の場合には体重を落とすとよくなることがあります。すぐにはよくならないことが多いので、気長に試してみて下さい。


陥没乳頭の場合、どうしたらよいでしょうか。


陥没乳頭の場合には、ひどければ授乳のときに困ることもありますし、感染をして乳腺炎になることもあります。しかし、一般的にある程度は授乳もできますし、感染することも頻度的には少ないのです。一方、手術をすると下の乳管を傷つけてしまいますので、逆に授乳できなくなることもあります。したがって、陥没乳頭だけですぐに手術をすることは一般的には行ないません。症状により専門医と相談して下さい。


異常乳頭分泌


乳頭から分泌物が出ることはままあることです。その場合の注意点を癌との鑑別を中心に述べてみます。まず、分泌物がどこから出てきているかを観察して下さい。乳頭には片側だけで20個くらいの穴があります。そのうちの1個の穴だけからなのか、複数個の穴からかを見て下さい。次に出てきている分泌物の性状を見て下さい。豆腐のかすのようなものか、さらさらしたものか、色はミルク色か、無色か、黄色か、血の混じった色かなどです。癌の場合には両方の乳房に多発することはまづありませんので、片側の乳房だけからで1個の孔からでかつ血の混じった色をしていることがほとんどです。この場合でもポリープからの出血が大部分で、癌のことは確率的には低いのです。

両側からさらさらとした分泌物がある場合には、乳汁分泌ホルモンの異常の場合もあります。この場合には採血してホルモンの値を測ればすぐに分かります。

検査としては、マンモグラフィ、超音波検査、乳汁分泌ホルモンの採血などの他、細胞診、乳汁分泌液中のCEAという物質の測定、MRI、分泌のある乳管から造影剤を注入してのマンモグラフィなどがあり、これらでも診断がつかない場合や、ポリープ、癌などが疑われる場合には、生検といって外科的に摘出手術をすることもあります。

このほか、乳頭の穴からではなく、本当に乳頭あるいは乳輪の皮膚から黄色い分泌物があり、かゆみを伴うことがあります。これはアトピー皮膚炎など皮膚の病気のことがほとんどです。
これらの鑑別は難しいため、片方の乳房の1箇所のみからの分泌物の場合には外科に、両側の分泌物の場合には外科あるいは婦人科に受診して下さい。



石灰化とは


マンモグラフィ上の重要な異常所見に石灰化と呼ばれる白い細かい粒があります。この石灰化は種々の原因でおこってきます。その中には癌もあるのですが、癌の石灰化と乳腺症や良性の腫瘍である線維腺腫の石灰化などとでは石灰化の特徴が違います。癌の石灰化は、非常に細かい粒がその他の場所にはないのに、ある特定の場所にはかたまってあることです。マンモグラフィを見慣れた先生が乳腺症の石灰化といわれるのならば、問題のない石灰化と考えます。


10歳以下の乳癌


10歳以下の乳癌はまずありません。乳癌の心配は不要です。


乳癌再発の危険


乳癌の手術後に転移再発する人は、全乳癌患者さんの3割くらいです。この率は、手術時の状態によって大きく異なり、最初から進行していた人は再発の危険が大きく、早期であった人は再発の危険は少ないのです。再発の危険性は、リンパ節転移の状況とか、癌の大きさ、癌細胞のたちの悪さ(異型度といいます)、ホルモン感受性の有無などにより推測し、必要におおじて再発を予防するための薬を使います。再発は、約7割は術後5年以内におこり、それ以後は徐々に減っていきますが、10年を過ぎてから起こる人も稀にあります。

定期検査していればある程度早期発見できます。ただ、しょっちゅう検査ばかりしているわけにもいきませんし、画像診断の限界もあります。一般的には、乳癌は他の癌に比べると再発後もいろいろな手立てがあるのですが、いったん再発すると、残念ながら完治する人は2割以下です。



家族性乳癌


家族が乳癌の場合には確かに乳癌になる確率は他の人より高いというデータがあります。この原因は二つあり、一つは本当に乳癌にかかりやすい遺伝子を受け継いでいるために乳癌になる可能性と、もう一つは家族と同じ屋根の下に暮らしているために食事など乳癌になりやすい環境が同じである可能性です。日本においては前者の頻度は低いと考えられています。ただ、もし母親の他にも乳癌の人がいるとか、両側乳癌の人がいるとか、若年で乳癌になった人がいるなどのことがあれば気をつけたほうがよいでしょう。自己検診の仕方は、このホームページに載っています。


男性の乳房腫瘍


男性でも乳がんはありますが、20, 30代では比較的稀です。男性の乳房が腫れてくる疾患で、一番多い疾患は女性化乳房症です。乳頭の下にそれほど硬くないしこりができます。痛みを伴うことが多いです。左右均等ではありませんが、ホルモン的な原因ですので、両側にくることもあります。乳がんとの鑑別は、硬さ、および位置(乳がんの場合には乳輪と同心円でない場合が多い)、乳頭分泌の有無などです。現在女性化乳房症に保険適応のある薬は鎮痛剤くらいしかありませんので、診断さえつけば放置することが多いのですが、何らかの薬剤が原因でおきている場合には、その薬を中止してみることもあります。その辺のことをお医者さんに聞いてみれば安心できるでしょう。